ハウスメーカーや工務店に依頼し、自邸を建設する際に構造について施主側から踏み込んで検討される方は少ないとは思いますが、地震大国である日本では構造検討は極めて重要な項目であります。
今は耐震等級という基準も策定され、地震に強い家を依頼する環境は整っているといえると思いますが正しい選択や最低限の知識を持っていないと望んだ形にはならないかもしれません…
本日は、危ない会社や法チェックの方法を自己の知識の強化により見抜くための書籍を紹介します。
専門性がありながらも分かりやすくイラストやキャラクターが会話形式で解説してくれるのでとてもとっつきやすい作りになっています。
しかし、内容は専門的な部分が多いので一歩踏み込んで学びたいという方向けです。
要点だけさらっと知りたい方は最後のまとめを参照し、ハウスメーカーや工務店に確認してみてください。
書籍名:「楽しく分かる!木構造入門」 佐藤実著楽しく分かる!木構造入門
以下は本の見出しと小見出しを抜粋したものを記載しています。
※太字の注記は私の経験や知識による補足になりますので著者の意見とは
異なる可能性がありますのでご了承ください。
□構造に対する誤解の数々
・一般的な木造住宅の構造計算の実情
・四号特例とは(会社によっては構造計算がされていないかも?)
・建て主が構造計算を求めていない(構造計算をしてほしいと求める人は少ない)
□3つの構造検討方法と検討項目
・壁量の検討 (耐力壁と呼ばれる地震に耐えるために配置される壁)
・部材の検討 (家を支える柱や梁のサイズ、組み方)
・地盤と基礎の検討(地盤調査結果を踏まえ、基礎形状の決定)
※基礎形状とあるが現在の木造住宅は施工性・維持管理等からベタ基礎が多く採用されます。
・構造計算方法
①仕様規定 (建築基準法による最低基準、四号建築物に該当)
②性能表示計算 (品確法による①より詳細な基準により算出、長期優良住宅に該当)
③許容応力度計算(建築基準法による安全性が高い計算方法、木造3階の住宅等に該当)
※建て売りは基本①が多く、長期優良住宅を取得している場合は②までやっています。
建て売りだとしても3階建てであれば③をやっているので構造的には安心です。
注文住宅では会社の考え方によるので相手方に確認しましょう。
□仕様規定:壁量計算
・壁量計算って何?、壁量計算の方法(概要から算出方法の説明)
・長期優良住宅との比較 (構造計算方法①と②の違い)
・許容応力度計算との比較 (構造計算方法②と③の違い)
※施主が壁量計算の方法まで理解するまで踏み込む必要はないと考えますが、構造計算方法①で設計
された家を購入される方は自分で壁の配置バランスなどが分かると危ない物件を避けることができ
ます。
しかし、一般の方が本書を読んだだけですぐに見抜くようになることは難しいです。
自分の目でも良し悪しがチェックできる最低限の知識は付けて図面を確認し、怪しいと感じる
部分がある場合や販売会社の説明に納得できない場合は専門家へ相談することが望ましいです。
□仕様規定:壁の配置バランス
・四分割法でバランス確認
・偏心率と四分割法
・凸凹形状の建物は分割して対応
※四分割法とは構造計算方法①で使われる耐力壁のバランス確認法です。
平面を4つに分け極端な偏りがないか簡易的にチェックする方法です。
偏心率とは四分割法からより詳細な計算方法になり精度があがります。
□仕様規定:柱頭柱脚の接合方法
・接合金物の選び方
・N値計算方法
※木造住宅での在来工法では様々な金物を使用します。
ここでは選定方法を解説していますが、設計・施工者向けなので施主としては
「耐力壁(構造的に 大きな力がかかる部分)の近くには大きい金物や使用する金物の数が増える
んだな」ということを理解し、建築中の現場を見る機会がある際はその点に注意しながら見回ると
良いかと思います。
無いとは思いますが耐力壁の両側に何も金物が付いていない場合は図面や担当者へ確認しましょ
う。
タイミングとしては上棟して金物検査が終わった段階が最適です。
あまり早すぎても金物取付前なので意味がないですし、遅すぎても断熱材やボードが張られてしま
うので工事進捗を工程表や会社へ聞き取り確認しましょう。
□仕様規定:8つの仕様ルール
①基礎の仕様
②屋根材の緊結
③土台と基礎の緊結
④柱の小径など
⑤筋交いの仕様
⑥横架材の欠き込み
⑦火打ち材
⑧部材の品質と耐久性の確認
※建築基準法施行令にならい各項目を解説してくれます。ここは完全に専門分野のエリアなので仕事
として構造を学びたい方が対象となります。
□部材の検討
・柱の梁の組み方はシンプルに
・無垢材と集成材はどちらが強い?
・プレカットでよくある間違い
※各部材の計算の仕方だけでなく構造の考え方や知ってそうで知らない材の話など感覚的に理解でき
る部分なので読み物として面白いなと感じた部分でした。
□地盤と基礎
・家の要、基礎の種類を知る
・ベタ基礎神話の問題点
・ベタ基礎の基本ルールを覚えましょう
・ベタ基礎に向かない間取り
・地盤調査の種類と特徴
・SWS試験の結果の読み取り方
・地盤補強工事の種類と選び方
・柱状改良と基礎の相性をチェック
・上部構造との整合性をとる
※一番最後に出てくる項目ですが内容としてはかなり重要で有益なものです。
今の木造住宅は、ほぼほぼベタ基礎で作られていますがそれに対して警鐘を鳴らしています。
ベタ基礎を完全に否定しているわけではありませんが特性や守らなければならないルールを理解せ
ずに採用することの危険性を教えてくれるので必ず確認したい部分ではあります。
また、地盤についても地盤調査でよく採用されるSWS試験(スウェーデン式サウンディング試
験)の読み取り方など実践的な内容です。調査結果をもとに採用すべき地盤改良方法及び構造検討
方法も記載されているので最終章だけでも有益な本であると感じました。
□まとめ
色々説明しましたが、良い家を建てるにはこれらの情報をきちんと理解したハウスメーカーや工務店
を見つけることが施主として一番大事なことだと思います。
自分がここで建てたいなと思った会社を見つけたら構造について何点か質問してみると良いです。
構造計算は行いますか?
YESなら①仕様規定②性能表示計算③許容応力度計算どれなのか?
最低でも耐震等級2以上は欲しいです。自分で指定できるなら絶対に耐震等級3をおすすめします。
大地震への備えになりますし、地震保険の割引もされます。
初期に掛ける費用に対して安心という名のリターンは非常に大きいです。
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